⑮歳 ②

3/4
前へ
/28ページ
次へ
店の中は薄暗く、入るとすぐに受け付けがある。 その横と後ろはカーテンでしきられていた。 横は待ち合い室らしい。 後ろのカーテンの向こう側に、他の女の子が待機、接客を行う場所らしかった。 男の(祐介)(この時初めて名前を聞いた。) が、受け付けに座っていた、祐介よりさらにいかつい人と短い会話を交わした。 しばらくの間、祐介と二人待ち合い室で待つ。 やや緊張して待っていると、カーテンが開かれ眼鏡をかけた優しい感じの人が入ってきた。 私と向かいあって座ると、テキパキと小さなテーブルに色々な書類を並べた。 一息ついて私の方を向くと、一気に喋りだした。 「横の祐介から話は全部聞いてるから安心して。家出中ってことは寮入るやんな…」 色んな事を言われた。 仕事内容、給料のこと、寮のこと、歳のこと…。 そんな一気に言われても何が何だか分からない。 でも半分くらいは理解出来た…と思う。 仕事の前に寮に行くことになった。 さすがに大きい荷物、それに制服の入った袋を持ったまま仕事をしては、制服が見つかった時に厄介なことになるから。 祐介も仕事があるため、店の前でバイバイした。 別れ際祐介は自分の名刺を私に渡し、「仕事終わったらかけといで。公衆からでええから」と言ってその場を離れた。 私は名刺を鞄に大事にしまい、店長に連れられ寮に向かった。 寮は普通のマンションで、玄関ホールはオートロックになっている。 部屋は三階。 部屋の中は九畳のワンルーム。ユニットバスに、冷蔵庫完備のキッチン。 クローゼット式のタンス、エアコンまでついている。 小さいが、出窓もついてある。 少しウキウキした。給料から寮費が引かれるらしいが、一万ちょっと。安い。 この部屋で新しい生活が始まる。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

93人が本棚に入れています
本棚に追加