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店の中は薄暗く、入るとすぐに受け付けがある。
その横と後ろはカーテンでしきられていた。
横は待ち合い室らしい。
後ろのカーテンの向こう側に、他の女の子が待機、接客を行う場所らしかった。
男の人(この時初めて名前を聞いた。)
が、受け付けに座っていた、祐介よりさらにいかつい人と短い会話を交わした。
しばらくの間、祐介と二人待ち合い室で待つ。
やや緊張して待っていると、カーテンが開かれ眼鏡をかけた優しい感じの人が入ってきた。
私と向かいあって座ると、テキパキと小さなテーブルに色々な書類を並べた。
一息ついて私の方を向くと、一気に喋りだした。
「横の祐介から話は全部聞いてるから安心して。家出中ってことは寮入るやんな…」
色んな事を言われた。
仕事内容、給料のこと、寮のこと、歳のこと…。
そんな一気に言われても何が何だか分からない。
でも半分くらいは理解出来た…と思う。
仕事の前に寮に行くことになった。
さすがに大きい荷物、それに制服の入った袋を持ったまま仕事をしては、制服が見つかった時に厄介なことになるから。
祐介も仕事があるため、店の前でバイバイした。
別れ際祐介は自分の名刺を私に渡し、「仕事終わったらかけといで。公衆からでええから」と言ってその場を離れた。
私は名刺を鞄に大事にしまい、店長に連れられ寮に向かった。
寮は普通のマンションで、玄関ホールはオートロックになっている。
部屋は三階。
部屋の中は九畳のワンルーム。ユニットバスに、冷蔵庫完備のキッチン。
クローゼット式のタンス、エアコンまでついている。
小さいが、出窓もついてある。
少しウキウキした。給料から寮費が引かれるらしいが、一万ちょっと。安い。
この部屋で新しい生活が始まる。
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