第1章四天王の別れ

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帽子で表情が隠される。彼の癖だった。 心のなかで決まったことを貫き通そうとするとき、 彼はいつもその表情を帽子で隠す。 それは、否定する他の人間の顔を、見ないため。 そして、心配そうに見つめてくる若の顔を、 見たくないせいでもあった。 「ツースト、フォース、わかっておやりなさい。」 「「若!!」」 「確かに、そうなのですよ。 この屋敷はわれわれにとっての鳥籠。 そして私たちは、その中で歌うことしかできない鳥。 外に出ようと願うのは、当たり前だと思いますが。」 「だが、あまりにも現実が見えていないとは 思わないか!?外は危険だ!!」 「その蔓にしがみついていることが、 ウーノはきっと、嫌なのでしょう。 私にも、少し理解できます。 この鳥籠から出たいと、 彼はいつも考えていましたから。」 クスクスと若は笑った。 若の気持ちが痛いほど伝わってくる。 彼も他の二人とまったく同じことを考えている。 行かないで……。このままずっと共にいて。 離れないで……。 それが伝わってくるからこそ、 やはりウーノは彼らの顔を見ることができなかった。 「お行きなさい、ウーノ。 そして、お願いします。 私達の代わりに、外の世界を見てきてください。」 「若……」
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