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文彦はそのまま進んでいった。
それが死への道だということを、
この時二人は気付いていなかった。
しばらく時は経ち、ウーノが旅に慣れてきた頃、
風の精霊が音をウーノに伝えた。
それは、聞き覚えのある音だった。
「警鐘!?」
その中にかすかにある音は、仲間の声。
《くそ……。ウーノがいれば……》
《ないものねだりだよ、ツースト。
それに、約束したジャン!
ウーノが帰ってきてもいいように、
平和な世界を保っておくって!!
頑張ろうよ。ウーノが安心して帰ってこれるように。》
フォースとツーストの声にウーノは驚いた。
聖域から逃げてきた自分のことを、まだ想ってくれている。
ウーノは馬を借り、聖域へと戻っていった。
確かに外はおもしろかった。
聖域にいるよりも、遥かに。
だが、逆に聖域にしかないものもあった。
それは、《大切な人の、笑顔》
(待っていてくれ。すぐに行く……)
聖域に戻ると、そこはもう面影などなかった。
壁は崩れ、植物は炭や灰と化し、
足元にはたくさんの兵士の死体が転がっている。
「バカな……。……若たちは!?」
ウーノはすぐに自分達のいつもいる広間へと向かった。
そこにあったのは、見たくない現実―――
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