3人が本棚に入れています
本棚に追加
「俺が希望党の党首……だからってむしゃくしゃを誰かにぶつけては行けないのか?」
俺はマスターに問う。
「それにあんただって良く言うだろ。」
「ああ。まあな。私の言った事を覚えていたか。」
「当然だろ?『人間はストレスがあったら生きていけない。だから人間はお互いにむしゃくしゃをぶつけ合い、むしゃくしゃでぶつかり合う生き物なんだ。』って俺が小さい頃良く言ってたな。」
マスターの言った言葉はどうしても覚えてしまう。
それだけマスターのいわゆる格言には迫力が有るのだ。
「なあマスター。あんたバーマスターじゃなくて哲学者の方が向いてたんじゃないか?」
「私が哲学者?あはははは。笑わせてくれる。」
「何でだよ。あんたは哲学的だろ?」
「私が哲学者。という事を笑ったのではない。」
「何でだよ。あんたさっき『私が哲学者?』って言ったじゃねーか。」
「そういうことではない。」
「じゃあどういう事だよ。」
「お前にそのような事を言われるとは思わなかった。ただそれだけだ。」
そういうとマスターは笑いが溢れ出したのか再びぷくくくくっ!と笑い出した。
「此処来てむしゃくしゃが増したよ。」
「まあそういうな。注文はいつものだろ?」
ふてている俺を宥めるようにマスターは言う。
「ああ。何時ものだ。」
それだけ言うとマスターは軽いリズムでカクテルをシェイクし始めた。
小刻みな水の音が耳に程よく響く。
「こんなものか。」
マスターがシェイクをやめ、カクテルをグラスに注ぐ。
「はい。おまっとうさん。」
おまっとうさん。というのがマスターには合うがこの店には合わない。
そんな微妙なシナジーがまた小気味良かった。
…それから1年経ったろうか?……
ハァハァ。
俺の息使いも荒い。
「まずいな……。」
後ろからまた地面を踏む音が聞こえる。
「こっちだ!」
俺は華織の手を引っ張る。
状況が状況だ。
いちいち華織の手を引いてドギマギなんてしてられない。
ハァハァ……。
さっきより後ろの地面踏む音が速くなってないか?
まずい……。
まずい…………!
<眠気:破壊衝動へ続く>
最初のコメントを投稿しよう!