眠気:冒頭

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「俺が希望党の党首……だからってむしゃくしゃを誰かにぶつけては行けないのか?」 俺はマスターに問う。 「それにあんただって良く言うだろ。」 「ああ。まあな。私の言った事を覚えていたか。」 「当然だろ?『人間はストレスがあったら生きていけない。だから人間はお互いにむしゃくしゃをぶつけ合い、むしゃくしゃでぶつかり合う生き物なんだ。』って俺が小さい頃良く言ってたな。」 マスターの言った言葉はどうしても覚えてしまう。 それだけマスターのいわゆる格言には迫力が有るのだ。 「なあマスター。あんたバーマスターじゃなくて哲学者の方が向いてたんじゃないか?」 「私が哲学者?あはははは。笑わせてくれる。」 「何でだよ。あんたは哲学的だろ?」 「私が哲学者。という事を笑ったのではない。」 「何でだよ。あんたさっき『私が哲学者?』って言ったじゃねーか。」 「そういうことではない。」 「じゃあどういう事だよ。」 「お前にそのような事を言われるとは思わなかった。ただそれだけだ。」 そういうとマスターは笑いが溢れ出したのか再びぷくくくくっ!と笑い出した。 「此処来てむしゃくしゃが増したよ。」 「まあそういうな。注文はいつものだろ?」 ふてている俺を宥めるようにマスターは言う。 「ああ。何時ものだ。」 それだけ言うとマスターは軽いリズムでカクテルをシェイクし始めた。 小刻みな水の音が耳に程よく響く。 「こんなものか。」 マスターがシェイクをやめ、カクテルをグラスに注ぐ。 「はい。おまっとうさん。」 おまっとうさん。というのがマスターには合うがこの店には合わない。 そんな微妙なシナジーがまた小気味良かった。 …それから1年経ったろうか?…… ハァハァ。 俺の息使いも荒い。 「まずいな……。」 後ろからまた地面を踏む音が聞こえる。 「こっちだ!」 俺は華織の手を引っ張る。 状況が状況だ。 いちいち華織の手を引いてドギマギなんてしてられない。 ハァハァ……。 さっきより後ろの地面踏む音が速くなってないか? まずい……。 まずい…………! <眠気:破壊衝動へ続く>
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