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それがお互いの幸せに繋がるの、そして何よりもあなたの幸せに繋がるわ。
もしもまたいつかあなたと何処かで出会う事があれば、その時はまたあの場所へ連れていって。そしてゆっくりと飲みましょう。
お互いの近況などを話しながらねっ。
PS あなたは様々の表情を見せる秋が好きだって言ったわねっ。今まで言わなかったけれど私は春が好きなの。
そこで手紙は終わっていた。僕は破り捨てる事も、くしゃくしゃに丸めて捨てる事もせず、綺麗にそのままテーブルの上に置いた。
僕は台所へ行き、ココアを飲んだ。それは昨夜に飲んだ物とは違った、優しく暖かく、ほろ苦さを備えた初春の味がするココアだった。
ゆっくりと飲みながら窓を開けると微かに彼女の匂いがする風が入り込んできた。
ふと気が付くと、家の前にある桜の木の蕾が一輪、いや、ぽつぽつと咲き始めていた。
厳しい寒さを乗り越え、一年待ってまた花を咲かせる桜の木に再動の息吹を感じた。
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