そして始まり

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今ならどうして彼女が春がすきなのか分かった気がした。   春は卒業式と入学式があるように、別れと新たな出会いが同時におこる季節だからだ。   旅の終着点でもあり、新たな旅の出発でもある、そんな双方の違った顔を見せる春という季節が、彼女が魅せられている理由なんだろう。   いかにも彼女らしい、そんな事を思い、胸の内にしまいながら、ココアをゆっくりと飲みほした。   彼女が春という季節に込められた意味を胸に秘め出ていき、僕の元を去っていったように、僕も彼女の事を忘れない、忘れられるはずが無いのだが。   彼女に応える意味も込め、僕も新たな道を踏み締め、また違った旅を始めるとしよう。   どんなに時間がかかろうと、たとえ旅のパートナーが見つからなかったとしても、僕は旅を続ける。   一年間耐え、春に花を咲かせる桜の木のように、僕も幸せという名の花を咲かせるために。
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