12月22日

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そして、午後になり、すももは伊織と出掛けた。 「……」 「この街は大きいですね」 「……」 「活気があって、実にいいです」 「……」 「すももさん、もう少し楽しそうにしたらどうですか?」 「伊織君に、文句を付けられたくはないです」 口調が移ってしまったかのように、すももは言う。 「ぷッ……あはは」 その様子を見て、伊織は吹き出した上に、『笑った』。いつもの微笑みでもなく、心から『笑った』のだ。 「し、失礼しました……。全くあなたという人は……」 「やっと本気で笑ったね」 「あ……」 その時初めて伊織は悟った。 彼女がわざと自分を笑わそうとしてくれていた事を。 あなたはどうして、昨日あんなヒドい事をした僕に、こんなにも優しいのですか? あなたはどうしてそんなにも広い心を持っているのですか? 僕があなたの婚約者だからですか? わからないーー。 「じゃ、行こうか。案内すればいいんだよね」 無邪気に微笑んだすももは、伊織の脅威になるーー。 何でも見透かしたような彼女が、伊織には恐ろしかった。
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