12月23日

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「ん~」 少し考えた後、すももは少し背伸びをしながら伊織の頬にキスをーー。 「ーー」 いきなり、伊織の顔の向きが変わり、頬にするはずだったキスが唇になってしまった。 「い、伊織君!!」 「ごちそうさまです。すももさん、男の人を信用するのは危ないですよ?」 伊織はクスッと笑った。 まるで先ほど、脅威だと思っていた相手を負かしたような……そんな笑みだった。 「僕はあなたと婚約します。これは絶対です」 「お父さんが……決めたから?」 「はい」 「ーーッ」 平然と頷いた伊織に、すももは傷ついたような声を出す。 「伊織君なんて知らないッ……!」 すももはその場から逃げるように、家を飛び出した。 もちろん、行く宛もない。 杏の家に転がり込もうか考えて、迷惑が掛かるからとその考えを打ち消した。 「……」 1人寂しく、昼間の街を歩く。 他にどうする事もできないから。 だからただ歩く。 「ーー」 唐突に、伊織の先ほどの言葉を思い出し、立ち止まる。 キスされた事は許せないけれど、それよりも、伊織の言葉が心に刺さる。 もしも伊織がただの転校生であったなら、すももに対して婚約するなど、という感情を抱く事はなかったという事だろう。 「だったら……」 だったら、邪魔をしてほしくなどなかった。 氷室とあんな形のまま、冬休みに入ってしまった。 どうしてこんな事になってしまったんだろう。 「ヤだよ……」 「姫野……!」 驚いて、顔を上げた。 「氷室……君ッ!」 すももは氷室に抱きついた。 「どうした?姫野」 状況がまだ理解できていない氷室は、すももの頭を撫でて、問う。 「もう家には帰れないよ……」 伊織と、どんな顔をして会えばいいかわからない。 もしかしたら、伊織が自分の好きな人を両親に知らせているかもしれない。 それが怖かった。 「何があった?」 「……」 すももは氷室に言っていいのかどうか迷った。 「言ってみろ」 「……」
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