162人が本棚に入れています
本棚に追加
すももは深呼吸した。
どこから話そうか、整理したかったからだ。
「ここじゃ……話しにくい……かな」
「……。場所、変えるぞ」
氷室は、すももの手を引っ張って、あまり人通りのない、公園へと連れて行く。
すももはその氷室の手にぬくもりを感じた。
「……」
すももはサンタ一族について話すかどうか考え、氷室には知っていて欲しいという事で話し始める。
「私の家は、サンタなの。驚く……よね……いきなりこんな事言っても」
当然だろう。
「姫野……」
お前、頭打ったか?そんな事を問われるのは嫌だった。
「あ……やっぱりいい……。聞かなかった事にして」
「姫野。逃げるな」
まっすぐすももを見ている氷室に対し、すももは視線を逸らしーー氷室の注意で再び氷室と視線を合わせるしかなくなる。
「ぁう……」
「俺はお前が話し終わるまで何も言わない」
「……」
冷たく言い放った氷室に、すももは一瞬動揺し、安堵した。
とりあえず、氷室は自分が話し終わるまで、真意を見極めるつもりなのだろう。
「……サンタさんっていうのは世界中にいて……サンタはサンタ同士で結婚しなくちゃいけなくて……。伊織君が一族の事情で転校してきたのは、この為だったんだ……」
「……」
ピクリとも反応しない氷室を見ていると、不安になる。
「私は……他に好きな人がいて……婚約するなら、好きな人とがいいの……。伊織君は、嫌いじゃないけど……恋じゃないというか……」
「今日、伊織君に結婚の事いろいろ聞かれて……。キスされた……」
「!」
氷室が一瞬反応する。
「その後伊織君に聞いたの。伊織君はお父さんが決めた婚約相手だから私と結婚するのかって……。そしたら頷いた」
「……」
氷室は内心かなり頭にきていた。
伊織に対して、怒りを覚える。
最初のコメントを投稿しよう!