12月23日

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彼女にはれっきとした「恋い焦がれる相手」がいて、自分が思いを打ち明けたところで、彼女の気持ちは揺るがないだろう。 「……」 それでも、諦めきれない自分がいた。 告白して……はっきりとした答えが返って来ない限りは、まだ可能性があると自分の脳が言っている。 ただの自惚れだろうかーー。 「お兄ちゃん、危ない!!」 そんな声が聞こえたのと、目の前に車が突っ込んで来たのは同時でーー。 考え事をしていた氷室は、何の抵抗もできないまま、意識を手放した。 「誰か!!救急車!!救急車!!」 そんな声も氷室には届かない。 ただ、底のない沼に沈んでいくようなーーそんな感覚がして、体が重くて、動かなかった。 「氷室……君?」 すももは、嫌な予感を感じ、彼の名前を呟いた。 「どうした?すもも」 「え?何でもないの」 父に問われ、すももは慌てて答えた。 「なら、いいがーー」 「それより、伊織君は?」 「彼なら、母さんと買い物だよ」 「そうなんだ……。伊織君から何か聞いてない?」 「いや、何も?」 「ならいいよ」 どうやら、伊織は両親にすももの好きな相手をまだ伝えていないようだ。 とりあえずはひと安心。 「う~ん」 今度は、先ほど感じた嫌な予感の方を片づけようと、すももは電話に手を伸ばす。 「はぅ……」 氷室の家に電話をしようと思うのだが、親が出たらと思うと、なかなか電話する気になれない。 「う~」 やっとの事で、番号をプッシュし終わり、電話が掛かる。 「……」 どうやら、家族全員留守のようで、誰も電話に出ない。 「……はぁ」 諦めて、電話を切る。 「……」
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