12月24日

2/7
前へ
/34ページ
次へ
「すもも、起きて。杏ちゃんから電話来てるわよ」 「電話?」 すももは、わざわざ部屋に入ってきた母から、電話の子機を受け取り、耳に当てる。 『すもも?今すぐに、今から言う病院に来て』 「どうしたの?」 『氷室が……氷室が事故った』 「!!」 すももは、杏の言葉で一気に眠気が覚めた。 「氷室君が!?」 『とにかく早く!!意識が戻らないみたいでさ……。原因とかはあっちで話すから』 「わかった」 すももは電話の声を聞きながら着替え、それが切れた頃には既に階段を駆け降りていた。 「お父さん、お母さん、ちょっと出掛けてくる!!」 「待ってください!!僕も行きます!!」 伊織が慌てて追いかけてきた。 「どうしてこんな朝早くに?」 「氷室君が……事故に遭ったって……」 「そんなッ……」 これには伊織も驚いたようで、絶句していた。 杏が言っていた病院にたどり着くと、入り口で杏が待っていた。 「おはよう」 その顔は深刻だった。 「おはよう」 「伊織君も来たんだ」 「一応、彼を友人だとこちらは思っているのですが……」 「とにかく行こう」 「うん」 3人で病院に入り、受付の人に、部屋を聞く。 「309号室ですが、家族以外の立ち入りは出来ません」 係の人に言われ、とりあえず部屋の前まで行ってみる事にする。 「……」 部屋の前には誰もいなかった。 「どうする?」 「とりあえず、誰か来るの待とう」 壁に寄りかかり、そのまま沈黙状態が続く。 「……」 どうする事もできない。 祈って氷室の状況が変わるなら、いくらだって祈る。 悔しい……。 サンタクロースは、人に夢を与えて、叶える仕事なのに、目の前で苦しんでいる人を助ける事はできない。 何て、無力なんだろう。 「……」 数時間経って、人々はそれぞれ活動を始める。 「……」 そのまま昼になるーー。 時間の流れはあまりにも遅すぎた。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

162人が本棚に入れています
本棚に追加