12月24日

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「氷室君……」 「あら?どなたーーかしら」 その人は、氷室の病室から出てきた。 上品な物言いと、まだ若い姿ーーきっと氷室の親族なのだろう。 「氷室煉君のーー友だちです。私は姫野すもも」 「煉のクラスメート?」 「はい。あの、氷室君は……」 「……正直、大丈夫とは言い切れないわ」 「じゃあ……」 「生きてる事には生きてる」 その言葉に、すももはホッとした。 「でも意識が戻らないの」 「……」 「せっかく来てくださったのに、ごめんなさいね。煉には会えないの」 「……はい」 「みんな、煉と仲良くしてくれてありがとうね」 「あの……もう少しここにいてもいいですか?」 「ええ。あ。あなたもしかして、姫野すももさん?」 「はい、そうですけど……?」 氷室の親族がどうして自分の名前を知っているのかわからなかったが、とりあえず頷く。 「煉の言うとおりね」 「へ?」 「とっても可愛い」 突然抱きつかれ、すももはしどろもどろした。 「あ。あなた、永峰杏さんね。いつも、煉と仲良くしてくれてありがとう」 「いえ、そんな……」 「で、あなたが噂の車谷伊織君ね。煉のいいケンカ相手になってくれてありがとう」 「僕の事まで?」 「煉ったら、何も言ってくれないでしょ?だから私がいろいろ質問するの。あの子、質問には答えてくれるから」 「あの……失礼ですが、あなたは……?」 若く見えるのに、毎日氷室から学校の事について質問する。という事は……。 「あら?気づかなかったかしら?煉の母親です」 「!」 杏と伊織は驚く。 「お若いですね」 「そうでもないのよ?もう今年で42歳」 「え?」 「42歳……?」 見た目よりもずっと若く(幼く?)見える氷室の母親を見る。 こんなに可愛いお母さんから、どうやってあんな無愛想な氷室が生まれたのか疑問になるほどだ。 「あなたたち、お昼ご飯はいいの?よかったら、奢るわよ?」 「私、あんまりお腹空いてないんです……。杏ちゃんと伊織君を連れて行ってあげてください。2人とも私に付き合って来てくれたから……もうお腹ペコペコだと思います」 「……そう?じゃあすももちゃんには、煉を守ってもらおうかな?くれぐれも、看護婦さんに見つからないようにね」
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