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「……」
校内がソワソワし始める。
あと5日で、クリスマスだからだ。
「すもも。今年のクリスマスだけどさ」
「クリスマス嫌い」
「相変わらずだねぇ。すもものクリスマス嫌い」
「だってクリスマスは……」
「外に出られないんだっけ」
本当は、外に出られない訳ではなく、一族ぐるみの仕事をしなければならないからだ。
「クリスマスには……いい思い出がないの……」
その一族ぐるみの仕事というのは毎年恒例で、ここまで言うとどんな人でもわかってしまうーーそう、すももの家はサンタクロースの一族なのだ。
そのことは、クラスの誰にも言ってはならないという掟になっているのだが、大体、自分がサンタクロースだと言って信じるような人間はこの世には存在しないだろう。
「そっかぁ……すももの家って厳しいね。恋人作っちゃいけないんでしょ?」
「うん……」
「すももだって好きな人いるのにね」
サンタクロースの一族では、サンタクロースの血が途絶えないようにと、一族の者としか結婚できない。
一般人と結婚するなんて以ての外なのだ。
その上、サンタクロースは生まれた時から婚約者を決められており、女子は16歳、男子は18歳になった時に婚約しなければならない決まりになっている。
すももは今年結婚しなければならない歳なのだが、生憎すももにはクラスメートに好きな男子がいる。
「全く……氷室君の事が好きだなんて、すももも物好きだねぇ」
「氷室君はいい人だよ」
「へぇ」
「優しくて、暖かくて……大好きなんだ」
そう言って微笑んだすももの笑顔は、まるで天使のようだった。
姫野すももは、クラス内外で男子からも女子からも人気がある。
小さい体と、童顔な顔がとても可愛いと人気なのだ。
その人気も、すもも本人の耳には全く届いていないのだが……。
ちなみに校内には姫野すもものファンクラブがあるとの噂もある。
そんな姫野すももの一番の親友は、永峰杏。
そして、すももが恋心を抱いているのが、氷室煉。
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