12月24日

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「……何かしら?」「私が……氷室君を……あんな状態にッ……」 「ーー」 氷室の母親は、驚いたものの、何も言わなかった。 「私が……彼を引き止めていなければ……氷室君にはこんな事にならなかったんです」 「そうなの…?」 「私の所為で……本当にごめんなさい」 「謝らないで」 「え?」 「あなたが直接関連してないんでしょ?間接的に関わったのかもわからないんでしょ?だったらあなたが謝る必要なんてない」 氷室の母親はすももを抱きしめた。 「あなたの所為じゃない」 「でも……ッ」 「苦しいのなら、泣いて。全部受け止めるから」 「でも……泣いても、氷室君は返ってこない……!!」 すももの声は苦しそうだった。 「煉が戻ってくるかどうか何て関係ないわ。あなたは泣かないといけないの。自分の為に」 「……」 「煉も……きっとあなたの苦しそうな顔は見たくないはずだから」 「あ……」 まるで、せき止められていた川が、一気に流れ出すように、すももは泣いた。 氷室の母親の胸の中で、思いきり泣いた。 「氷室君が……いなくなるのは……絶対……ヤだよ……」 途切れ途切れに、すももは言った。 「大丈夫。煉はそんなに弱くないから……。絶対……大丈夫」 しばらく、泣いて、泣きつかれるほど泣いたすももは、ゆっくりと氷室の母親から離れた。 「ありがとう……ございました」 「いいのよ」 すももは正直、この氷室の母親を、強いと思った。 自分の息子があんな状態なのに、息子の生命力を100%信じきった上に、他人の子どもまで宥めてしまうのだから。 「すももちゃんも、そろそろ帰りましょう?送っていくわよ」 「はい……」 すももはおとなしく頷いた。 明日は仕事。なのに、こんな状態では仕事が正確にこなせない。 「でも、送ってもらう必要はありません。1人で帰れます。お母さんには氷室君の近くに1秒でも多くいてもらいたいんです」
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