12月24日

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「ただいま」 家に帰ったすももは、すぐに部屋に引きこもる。 「……すももは大丈夫なのか……?」 「大丈夫ですよ」 不安そうな父親に対して、伊織は自信に満ちた答えを返した。 無論、自信があるのである。 朝の彼女よりもずっと、やる気に満ち溢れていたからだ。 「クスッ」 彼女がこれから何をしようとしているのか……それを考えるだけで楽しかった。 「ムダですよ」 伊織との婚約の件は彼女に諦めてもらうしかない。 こっちにだって、事情がありながら、こうして今まで会った事もなかった彼女と婚約させられそうになっているのだから。 「不満に思っているのは、あなただけではありませんよ」 他のサンタクロースだって、この掟に、異論を抱いているに違いないのだから。 「……」 掟の事はすももが考えている事の1つだろう。 しかし、1つの事で長い時間悩むような子ではないと、伊織は最近気づいた。 悩むなら、解決方法を探して、解決する。 それが彼女だった。 「今度は一体何をしようとしているんですか?あなたは」 彼女といると、本当に退屈しない。 もし、伊織が今愛している人に出会わなかったら、間違いなく、すももを愛していただろう。 「本当は……」 今すぐにでも愛すべき人の元へ行きたいのに、それができなくて、歯がゆい。 このまま3年間こちらで過ごそうと思ったのは、彼女への想いを捨てる為だったのに、会わなくなればなるほど、恋しくなる。 「わかってる」 すももの気持ちは、痛いほどわかる。 好きな相手と結ばれないという事が、どれだけツラいか。 「……」
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