162人が本棚に入れています
本棚に追加
氷室煉は成績優秀、運動神経抜群、高い身長にクールなポーカーフェイス……とここまではいいのだが、氷室は女子が告白しても眉一つ動かさず、冷たく女子をフるのだ。杏が「物好きだね」という理由はそこにあった。
フラれた女子は数知れず……。
そんな相手にすももが告白するなど、杏にとっては以ての外だった。
すももには出来るだけ安全な人生を送ってほしいというのに、氷室に告白してフラれたら彼女の心に一生物の傷をつけてしまう。
それが嫌だった。
すももが氷室の事を好きだと言うことは、杏しか知らないが、もし校内にその事を伝えれば、全員がすももの告白を阻止しようとするだろう。
「冬休みもあるし、クリスマス何かできなくても、他の日にプレゼント交換か何かしようか」
「うんッ」
嬉しそうに頷いたすももは、抱きしめたくなるほど可愛い。
「あ、お買い物してくる予定だった……」
母に頼まれた買い物をするために、すももは杏と別れてスーパーへ向かう。
「リンゴと、キュウリ、タマネギ、ピーマンに……」
買い物カゴの中身を確認し、レジへ向かう。
「ん~」
買い物を終え、スーパーを後にしながら、家に帰る。
ドンッ
「きゃ……」
誰かとぶつかってすももは小さく悲鳴をあげた。
「あ……」
「姫野」
氷室煉だった。
「氷室君、どうしたの?」
「別に」
氷室は素っ気ない返事をすると、すももの荷物を代わりに持った。
「ありがとう、ごめんね……。荷物……」
「俺が勝手に持っただけだ。気にするな」
どうやら、このまま家に送ってくれるらしい。
「今年は……ホワイトクリスマスになりそうもないね。もう20日なのに、雪が全然降らない……」
「いや……今年は降るぞ」
「え?ホント?氷室君が言うならホントなんだよね」
「嘘は言わない」
「じゃあ楽しみかなぁ」
告白することも叶わない。
だが、好きな相手が目の前にいる。
告白できたら、どんなにいいだろう。
「あ、ここで大丈夫。ありがとう」
家の前まで来て、荷物を受け取る。
「ごめんね、お茶も出せないで……。うちのお父さん、私が男の人と歩いてるのを見るのだけでもいやなのに、家に入れたらもっと嫌がるから……」
「ここで構わない」
最初のコメントを投稿しよう!