12月20日

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氷室君は優しい。 それだけが今のすももの中で確かな事。 「じゃあ、また明日学校でね」 「ああ」 氷室はそのまま帰っていってしまった。 「ただいま」 そう言って家に入る。 「お帰りなさい、すもも」 さすが、すももの母親と言ったところか、すももと同じくおっとりしている。 「今年のサンタ衣装、もう用意してあるわよ」 帰っていきなりその話題かと、すももは頬を膨らませる。 「今年のは特別可愛いわよ」 「え?ホントに?」 現金なすももは、すぐに母親に飛びつく。 「今年はママの手作り」 「やったぁ。何年ぶりだろ、お母さんの作ってくれたサンタの服」 すももは嬉しくなった。 これでは誰が見てもクリスマスが好きな女の子である。 「すもも、帰ったのかい?」 今度は父親の登場だ。 すももの父は、見たまんまのサンタだ。 白い長いヒゲをしている。 髪の色も白い。 サンタ一族の男子は、生まれた時から髪の色が白い。だから、生えてくるヒゲも当然白い、というわけだ。 「今年は、お前の婚約者も一緒にプレゼントを配る事になっている。婚約者が18歳になったら式を挙げる」 すももの婚約者は、すももと同じ歳なので、まだ婚約できない。だからすももは、高校卒業するまでに思い出を作っておかなければならない。 「むぅ」 すももは再び頬を膨らます。 「明日の朝、彼がこちらに来るそうだ」 「……」 「そして、すももの学校に通うことになる」 「!」 学校は困る。 学校には氷室がいるのだから。 もし、彼の事が好きだと知れたら、父は恐らく無理やりにでも、すももの想いを断ち切らせるだろう。 「……」 「今頃は恐らく飛行機の中だ」 「……」 すももは考えた。 どうすればいいのかを。 そして答えは出なかった。
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