12月21日

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「転校生の、車谷伊織君です。車谷君は一族の事情によって、この学校に転校してきました」 「車谷伊織です。僕は、姫野すももさんと婚約するためにこの街へ来ました」 そう言って微笑んだ少年は、微笑んでいながらも、その言葉が本気であることを示していた。 「席は、氷室君の隣に座ってください」 ザワザワと教室内がざわめく。 「車谷伊織です。よろしく」 「氷室煉だ」 短く挨拶を交わした後、席に着く。 気まずい空気が流れた1時間目が終わり、休み時間になる。 もちろん、生徒の興味は、伊織とすももに注がれた。 「すももちゃんと婚約者ってホント?」 「ホントです。昔、2人の親がそう決めましたから」 伊織は誇らしげに微笑む。その光景を面白くないと思っている奴がいた。氷室煉である。 氷室は黙って教室を出ていく。 いつもと変わらない、無表情であったが、すももにはわかった。 「氷室君!」 慌てて追いかけようとするが、伊織がそれを止めた。 「あの人が、あなたの愛する人なのですね」 「ーー」 「僕が調べていないとでも思いましたか?」 「氷室煉。成績優秀、運動神経抜群……。僕は彼に負ける気はありません。彼に僕が劣っているはずがない。それを証明して差し上げます」 「違う……」 違う。 自分が氷室煉の事を好きなのは、成績優秀だからでも、運動神経がいいからでもない。 もっと根源的な何かーー。 でもそれが何かわからない。 「氷室君は……違うッ」 「すももッ!!」 すももは教室を飛び出した。 「私は、他人の気持ちを全く考えないような奴に、すももを渡すつもりはない」 「あなたが、永峰杏さんですね。すももさんのご友人の」 「すももの事、どこまで知ってるの?」 「全て、ですね。だから氷室煉の事がわかった」 杏は、伊織の微笑を怖いとさえ感じ、教室を後にした。 勿論、すももを追いかけるのである。
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