12月21日

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「すももッ」 「杏……ちゃん」 すももが涙を流していた。 それは、杏がすももに出会って初めて見た涙だった。 「氷室君……見つけられなかった」 「どうして氷室を追いかけようとしたの?教室から出ていくなんて、いつもの事じゃない」 「氷室君……怒ってた……。なんか、わかんないけど、怒ってるように見えたがら……」 「……すもも」 彼女は他人をよく見ている。 他人の気持ちを察するのが得意で、それで何度も彼女に助けられた。 だからすももは、誰も気づかない、ポーカーフェイスが思っている事でも、普段まわりの輪に入ってこない子が思っている事でも、異常が起こったらすぐにわかる。 「すもも、伊織君の事、どう思う?」 「……わかんない。私にとっては初めて会ったのと同じだから」 「じゃあ、伊織君と氷室、どっちが好き?」 「氷室君」 迷いのない、一言だった。 「だったら、婚約者だとか関係ないね」 「え?」 「氷室に、告白して」 「ーー」 急にすももの顔が赤くなり、それを杏は可愛いと思う。 いつもの事だ。 「告白って……どうやって?」 「まさか、ずっと氷室からの告白を待ってるつもり?」 「う~ん」 「時間ないんでしょ?」 「うん……」 「だったら伝えようよ。すももには私がいるから」 「杏ちゃん……」 「伊織君の思い通りにならないようにしよう」 杏が、他人に「さん」や「君」を付けるのは、その人を信用していない証。 別に尊敬しているわけではない。 「うんッ」
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