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とは言ったものの、今日から冬休みである。
氷室に会える可能性は、極めて低くなる。
「むぅ」
「すももー。お仕事手伝って」
下の階から母の声が聞こえた。
すももは黙ってベッドを抜け出す。
簡単に着替え、部屋を出る。
階段を下りて、リビングへ。
「おはよう」
「おはよう。早速だけど、すももには配るプレゼントをリストの情報通りに地域別に仕分けてほしいんだ」
そう。サンタ一族はたくさんあるので、1都道府県につき、一家が住んでいる。日本には合計47家族ものサンタ一族がいる。
家族で地域を分け、それ通りにプレゼントを配るのだ。
「うん」
すももの仕事は至って簡単。
地域のプレゼントはリボンと梱包してある紙が同じものを同じ場所に分ければいいだけなのだ。
「おはようございます」
ーーと、伊織が起きてきた。
「おはよう」
「何か手伝う事はありませんか?」
「う~む。では、すももと一緒にプレゼントを地域ごとに分けてくれるかな?」
「わかりました」
「すまないね。そうだ。午後からは2人で出かけてきたらどうだい?すもも、伊織君にこの街を案内してあげなさい」
「おお、それはいい。行きましょう」
「私は……」
「すももさん」
伊織がすももに顔を近づけてくる。
「氷室煉の事を、お父様に言ってもよろしいですか?僕は本気ですよ」
「伊織君は……どうしてそんな事するの……?」
「どうして?こうでもしないとあなたは納得してくれませんから」
微笑んだ伊織。
口調も、笑顔も……全て嘘のように感じる。
それがすももにはわかった。
「……」
「では決まりです。大丈夫、私を案内してくださればいい事ですから」
そう言って伊織は再び与えられた仕事に取りかかった。
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