83人が本棚に入れています
本棚に追加
今日で一週間も終わる。
昨日も今日もさして変わらないが、今日の午後には全校集会があるように聞いている。
腕時計を見ると長針は8をさしていた。
そろそろ、彼女が走って来る頃。
校門を一歩でて右を見ると、豆のようなスカート姿が見えた。きっと彼女だ。
いつもこの時間に校内へ駆け込んでくるのを見るのがここ最近の習慣となっていた。
「今日も8時半までよろしく、作田」
はいと小さく答える作田は、やはり僕を見てくれない。
彼女に背を向け、教室に向かうと作田はやっと校門に向き直ったようで、作田の靴と僕の靴がじゃりじゃりと砂を擦る音が耳に入った。
風紀委員の作田はいつも、8時前から校門に立って挨拶をし、30分になったら校門を閉めると言う仕事を任されている。
もともと当番制であったものが、無理やり作田一人に押しつけられたのだ。
作田に挨拶をしてから教室に上がると、朝早いせいだろうあまり人はいない。今日も数人の男女がストーブを囲んで朝から話に花が咲いている。
クラスメイトに避けられながら窓際の席に着くと窓の向こうを見渡す。寒そうに挨拶をする作田がよく見えた。
くす、と笑いが漏れると、ストーブの辺りがざわつく。
「今度は誰に目ェつけたんだ」
「あの3組の男子、逆らったから退学になったんだって」
「えー、こわっ!」
横目で声がしたほうを見ると、男女は顔を青くして口を閉じた。
なんかすごい噂が流れてるな……。
実際、3組の滝口は自主退学だ。僕は全然関係ない。
視線を窓の外に戻した。
人知れず彼女を上から見つめる幸せな時間は、そろそろ終わってしまう。
30分を知らせるチャイムが、作田を校門から動かした。
最初のコメントを投稿しよう!