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   授業が始まると、とたんに眠気が襲ってくる。眠いのをこらえて黒板を睨むと、メガネの数学教師の身がすくんだ。  不可抗力だ。目つきの悪さは親譲り。  仕方なく目の前に有る女生徒の背中に視線を移すと、体が硬く強張ったように見えた。僕の視線はビームにでもなっているのか。  どこを見ても迷惑をかけるから、もう外を見るしかない。ここからグラウンドをはさんだ校門付近に、小さな黒いかたまりを見た。  何かと思ってじっと見ていると、長い尻尾が特徴的な黒い猫だ。野良だろうか、首輪はしていない。金の瞳がこちらを射抜く。はっきり見えたわけではないが、金色のような気がした。  僕の視線でも感じたんだろうか、暫らく見つめ合うと猫は校門を出てどこかへ行ってしまった。  授業が終わると、日直だろう男子生徒が面倒くさそうにスポンジを上下させて黒板から数式を消し去っている。  ああそうだ。そういえば作田に言うことがあったんだ。  目の前の背中をつつくと、ひゃっと固まる。 「作田、」 「あ、はいっ」  言葉より一瞬遅く振り返るのを確認すると、僕は続けた。 「今日は全校集会があるから風紀委員会は中止。今日できない分は来週にまわすから」  それだけ言い終わると、僕は机にふせた。  作田は、「今日がなくて来週2回……」と呟くと体を前に向けたようだ。  これから3時間のつまらない授業に耐え抜けば昼休み。  待てよ、4時限目は自習だったか。となると授業時間の50分と45分の昼休みのうち30分は寝られるから……2時間も昼寝ができるのか。  そう思いつくと気分も軽くなったが、「セーターが薄い」「持ち物チェックが厳しい」などの風紀の投書が溜まっていたのを思い出してうんざりした。  
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