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   結局、僕は自習の時間の50分間、窓ぎわで背中に陽光をあびながらぬくぬくと惰眠をむさぼった。  昼休みのチャイムを合図に、2度寝に入ろうとした時だ。女子の声が耳に届いた。 「昨日ね、知らない人から荷物が届いたの」  宛て名は私でね、と呟く女子に、もう一人が「えー、気味悪うッ」と控え目に叫んだ。 「箱を開けたら水玉の枕があって、一緒に入ってたカードにはね、」 「カードには?」 「なんて書いてあったの?」 「『お代はすでにいただいているのでご安心ください。よい夢を』って」  机をくっつけて4人で弁当を食べているグループから、きゃーっなにそれー! と悲鳴が上がる。 「枕、だって……?!」  よく見ると話をしていたのは、作田だ。 『お節介キャンペーン実施中ですっ』  少女の声が脳裏をかすめた。……いや、まさかな。  キャンペーンが本物だったとして、どうなると言うんだ。  それでも期待してしまうのが悲しいところだ。  「お代」を払った覚えもないが、どういうことだろう。  もんもんとそのことだけを考えていると、全校集会がうっとおしくてならなかった。  早く帰って寝なくては。そう思うかたわら、気味の悪い枕を使いたがるとも思えない、と否定する自分もいた。  どちらにしろ、気がついたらもうものすごく期待してしまっているのだ。 緊張が、肺まで支配しているようで息苦しい気がした。  
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