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   意識が遠のいて、気がついたら風紀室に立っていた。 大きめの紙袋を右手に提げている。 「……あれ?」  中身を取り出すと、見覚えのある水玉柄の枕があった。  『ふしぎ雑貨店』の少女に売りつけられたものだ。……夢じゃなかったのか。  それにしても。 「なんてことだよ」  今まで、誰にも気付かれたことなんてなかったこの想い。  それ以上に想いを寄せられている本人なんて一生気付きそうにない。生徒全員から恐れられている風紀委員長に想われているなんて夢にも思わないだろう。  ため息を吐くと風紀室を右から左にゆっくりと見回した。  古い倉庫を借りて作ったこの場所には、いつも僕がいるから誰も近寄らない。  いつだって一人だが、静かに一人になれるのはここだけだ。  時計に目をやると、午後の授業開始20分前をさしていた。  自分の机の前に座ると、枕を抱えるように伏せって目を閉じる。 「ふうん、使い心地は悪くないな……」  背中に当たる日の光が眠りを促した。  何故だかいつもの眠りと違い、深く深く落ちていく感覚がある。  それもまた心地よく、ふわりと身をまかせるとさらに深いところへ落ちていくようだった。  
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