2/2
前へ
/80ページ
次へ
   いつ眠りに落ちたのかは覚えていない。  気付けばまわりは真っ白だ。  足元へ近付こうとしゃがんだが、立っている感覚がないことに驚いた。かといって、浮いているようでもない。  自分ひとりだけに色がある、ただそれだけの世界だった。 「夢……だよな。あの枕のせいだろうか」  声は出る。  体は、動く。  体感温度は……寒くもないが暑くもない。 このたびは恋の枕をご購入・ご利用いただきありがとうございます♪  上から声がした。……いや、右か? 左だった気もする。  後ろかと思って振り返ってみたけど誰もいない。  なんとなく、そこら中に気配があるだけだ。 「あの店の子だろう、これはどうなってるんだ?」 ただいまお節介キャンペーン実施中です。お楽しみに! 「ちょっと待て! ここからどうやって出れば……」 あら、ここは夢の中ですよ? 起きればいいんじゃないですか?  くすくすと笑い声が遠くなり、消えた。  それを見たわけでもないのに少女も消えた気がした。  それから後は話しかけても返事がなかったから、やっぱりあの時消えたんだと思う。  それからしばらくいろいろやってみて、やっと「起きる」ことを覚えた。  目を開けると夕日が部屋を赤く染めていて、今まで本当に眠っていたことを証明している。 「あーあ」  午後の授業をサボってしまったことに気がついて、ため息をついた。    
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

83人が本棚に入れています
本棚に追加