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いつ眠りに落ちたのかは覚えていない。
気付けばまわりは真っ白だ。
足元へ近付こうとしゃがんだが、立っている感覚がないことに驚いた。かといって、浮いているようでもない。
自分ひとりだけに色がある、ただそれだけの世界だった。
「夢……だよな。あの枕のせいだろうか」
声は出る。
体は、動く。
体感温度は……寒くもないが暑くもない。
このたびは恋の枕をご購入・ご利用いただきありがとうございます♪
上から声がした。……いや、右か? 左だった気もする。
後ろかと思って振り返ってみたけど誰もいない。
なんとなく、そこら中に気配があるだけだ。
「あの店の子だろう、これはどうなってるんだ?」
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「ちょっと待て! ここからどうやって出れば……」
あら、ここは夢の中ですよ? 起きればいいんじゃないですか?
くすくすと笑い声が遠くなり、消えた。
それを見たわけでもないのに少女も消えた気がした。
それから後は話しかけても返事がなかったから、やっぱりあの時消えたんだと思う。
それからしばらくいろいろやってみて、やっと「起きる」ことを覚えた。
目を開けると夕日が部屋を赤く染めていて、今まで本当に眠っていたことを証明している。
「あーあ」
午後の授業をサボってしまったことに気がついて、ため息をついた。
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