83人が本棚に入れています
本棚に追加
今日もまた、一人ぼっちの世界に落ちる。
別に気にすることなんて何もない。学校での独りだったのが、今度は夢の中になっただけだ。
「それにしても……ひま。」
何でこの枕を使う気になったかなんて、深く追求しない。キャンペーンに期待しているなんて、認めたくないから。
「本でも持ち込めないかな」
無気力に辺りを見回すと本が一冊、あった。
今まで自分しかなかったこの空間の、どこから出てきたんだ。
見覚えのあるブックカバーに包まれた本を恐る恐る手にとって、ページを開く。
これは寝る前まで読んでいた本だ。しおりも寝る前挟んだページにしっかりと挟まっており、それを確認すると本を閉じた。
いったい、どこから。
「まあ、夢だって言ってたし……」
また何か出てこないかと見回したが、ここには本と自分以外何もない。
「……これでソファでもあればいいのに」
本を見つめての独り言だったが、その言葉をスイッチとするように空間から染み出るようにやさしい灰色のソファが目の前に現れた。
「うそ」
なんだこれ。
手で触って確かめてみたが、本当にソファだ。
透けたりするんじゃあないかと不審に思っていたがちゃんと触れるし、いつまでもただのソファと対面しているのもなんか変だなと腰をかけてみた。
座り心地はいい感じだ。
座ってしばらくボーっとしていたが、本もソファも口に出せば出てきたことを思い出してひとこと、少女の名前を呼んだ。
あまく、やさしく、愛しさを込めてそして、悲しげに。
「作田」
数秒待っても、望むものは出てくるはずもなく、いつまで待っても叶わないことを知ると、彼は悲しく口元だけで笑った。
もし、僕が普通の生徒だったなら。
彼女に気持ちを伝えて、受け入れられるなんていう未来も存在していたのだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!