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「由良さん、もうすぐクリスマスですね。」
夕方の商店街に冷たい風が吹き抜ける。
木枯らしが俺、中嶋由良と、俺の右隣を歩く儚を包み込む。
そんな中、儚は俺に唐突に口を開いて言った。
いや…、唐突ではないか。
これだけ商店街を飾り彩るイルミネーションを見れば、そんな言葉も出てくるのかもしれない。
「そうだな…。クリスマス、何か欲しい物はあるか?」
儚は男だけど俺の恋人。
まあ、恋愛に性別なんて関係ないだろう。
クリスマス。聖なる夜。
恋人に何かプレゼントするっていうシチュエーションに、俺はどこか憧れている部分もあるし、何より、いつも俺を支えてくれる。
そのお礼の意味も込めて、儚にそう問い掛けた。
「あ、えっと…プレゼント欲しいとかそんな意味で言ったんじゃないんですけど…っ。」
慌てた様子で弁解しようとする儚に自然と零れた笑みを向けながら、左手で儚の頭をくしゃくしゃと撫でてやる。
「わかってるよ。そうじゃなくて…"いつもありがとう"って気持ちを込めてさ。」
俺のこの言葉を聞いてか、ホッと安心した顔を見せて"そうですねぇ…"と考え出す
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