内緒

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  「…寒……。」   走って出て来たものの、これからどうしたものか…。    さすがに今帰って"さっきは悪かった"っていうのも言いづらい。   俺が悪いのはわかってる…。 でも何だか自分が馬鹿にされているみたいで無性に腹が立ったんだ…。       ふと顔を上げると、見覚えのある道。   ああ、そういえばこの辺に岡田の家があったな…。 前に無理矢理遊びに行かされたから覚えてる。 仕方ない…。 今日は岡田の家に泊まらせてもらって、明日帰って謝れば良い…。     ごめん 儚…   心の中で謝れば届くような気がして、岡田の家へ向かいながら何度も何度もその言葉を心の中で繰り返した。                   ピンポーン―…     「はい。…って中嶋さん!?どうしたんすか!?」   ブザーを鳴らして出て来た岡田は、俺の来訪に余程驚いたのか少し声が裏返っていた。   「…いきなり悪い…。一晩だけ泊めてくれないか…?」   「えっ、良いっすけど…今、親いないからたいしたもてなしは出来ないっすよ?」   「良いから…頼む…。」   岡田は優しく微笑んで俺を家の中へ上げてくれた。           .
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