内緒

7/14
前へ
/57ページ
次へ
  「お湯入ってるんで、先に風呂入って下さい。着替えは俺の出しとくんで。」   岡田はぐいぐいと俺を脱衣所に向かわせて戸を閉める。   申し訳なく思いながら服を脱いで浴室に入る。   さすが一軒家のお風呂。 やっぱりアパートの風呂より広い。     身体と頭を洗って湯舟に浸かる。   オレンジの香りの入浴剤が入っているのか、心が落ち着いてくる。     儚は今何をしているんだろう…。 泣いているかもしれない。  今まで儚に怒った事なんてなかったからな…。   思えばケンカなんて初めてしたかもしれない。 一方的に俺が悪いケンカだけど。     両手で掬ったお湯をぱしゃっ、と顔にかける。     心配なんだ… 儚…     「湯加減どうっすか?」   浴室の戸の磨りガラス越しに人影が見える。 問い掛けた声から岡田だという事がわかった。   「調度良いよ。」   何だか今はこいつで良いから誰かと話していないと…何だか辛い…。   「着替えここに置いておくっすね。」   「ああ…。」   俺の返事の後、脱衣所を出ていく音がした。             .
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

573人が本棚に入れています
本棚に追加