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「お湯入ってるんで、先に風呂入って下さい。着替えは俺の出しとくんで。」
岡田はぐいぐいと俺を脱衣所に向かわせて戸を閉める。
申し訳なく思いながら服を脱いで浴室に入る。
さすが一軒家のお風呂。
やっぱりアパートの風呂より広い。
身体と頭を洗って湯舟に浸かる。
オレンジの香りの入浴剤が入っているのか、心が落ち着いてくる。
儚は今何をしているんだろう…。
泣いているかもしれない。
今まで儚に怒った事なんてなかったからな…。
思えばケンカなんて初めてしたかもしれない。
一方的に俺が悪いケンカだけど。
両手で掬ったお湯をぱしゃっ、と顔にかける。
心配なんだ…
儚…
「湯加減どうっすか?」
浴室の戸の磨りガラス越しに人影が見える。
問い掛けた声から岡田だという事がわかった。
「調度良いよ。」
何だか今はこいつで良いから誰かと話していないと…何だか辛い…。
「着替えここに置いておくっすね。」
「ああ…。」
俺の返事の後、脱衣所を出ていく音がした。
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