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「もしもし。」
『あ、兄さん?僕、高良やけど…。ごめん。山田君が熱出してもうて…、だから今日は行けへんねん。ごめんな?』
「そうかそうかっ。それは残念だ。お大事にな。」
「なんか残念に聞こえないんやけど…。」
その言葉に内心ギクッとするも、電話口なのでそこまではわからないだろうと思い電話を切った。
「ゴホッゴホッ…すみません…。俺が熱なんか出したばっかりに…。」
苦しそうな咳をしている。
顔も赤いし熱もあるし、完璧に風邪だ。
クリスマスに風邪で寝込むなんて運の悪い男だ山田君。
「ゆっくり休むんやで?僕のベッド使ってええから。僕は一旦帰るけ…」
僕の言葉は、力無く伸ばされた手に遮られた。
「何処にも行かないで…。俺の側に居て…。」
まったく…
「しゃあないなあ…。」
僕も甘くなったもんや…
力無く伸ばされた相手の手に自分の手を重ねて
二人分の体温を肌で感じた。
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