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朝、目が覚めてカーテンを開けて窓を開けた。
何だか冷えると思ったら雪が積もっている。
昨日の夜から降っていたのだろうか。
カーテンを閉めていたから気付かなかった。
黒や赤のランドセルを背負った子達が雪の塊を投げ合っている。
登校時間だろうな…。
"遅刻するぞ"と心の中で呟きながら、冷たい風の入ってくる窓を閉めた。
「…寒……。」
もそもそと布団の中で動いていた儚はポソッとそう零す。
「あ…、悪い。起こしたか?」
俺は悪いことをしたという気持ちを込めて謝りと問い掛けを送る。
「…大丈夫です…。あっ。」
眠たい目を擦りながら俺の問い掛けに答える儚。
いきなり何かを見つけたような驚いたような声をあげた。
「雪降ったんですね!…綺麗…。」
さっきまでの眠気なんてすっかり吹き飛んだ様子の儚は、カラカラと窓を開けて、落下防止用の柵の上に積もった雪を指先でそっと掬う。
「冷たい…。なんか嬉しいです。」
儚は白い息を吐きながら、手の上で溶ける雪を眺めながら呟いた。
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