二日目 ~休息~

2/2
前へ
/55ページ
次へ
 次の日の朝、渡邉は寒さで目が覚めた。 「……えっと……なぜ私はこたつで寝ていたのでしょう?」  部屋を見渡し、ベッドに寝ている聖を見て記憶がよみがえってきた。 「そうでした……」  昨夜、帰り道に寝てしまった聖を部屋に運び、そのままベッドに寝かせたあと、自分はこたつで寝たのだった。  時刻は午前八時。 「あっ! しまった! 遅刻――」 と言った後、渡邉は今日から出勤しなくていいことを思い出した。 「…………」  見れば聖は、当分の間起きそうにもない様子で寝入っている。  渡邉は風呂に湯を張り、ゆっくりと体を温めた。  風呂から上がっても、聖はまだ熟睡していた。  コーヒーを煎れ、音を立てないように簡単に部屋を片付け、本を読む。  大学を卒業して外務省に奉職して以来、こんなにゆっくりとした時の流れを感じるのは初めてだった。  正午になり、手馴れた様子で昼食を作る。  渡邉の料理の腕はなかなかだった。  聖はまだ起きないため、一人で済ませる。  食器を片付け、再び本を開く。  冬とはいえ室内には太陽の光が降り注ぎ、暖かい。  ――いつの間にか渡邉は、うとうととしていた。  実に何年かぶりの昼寝から目を覚ましても、聖は起きていなかった。 「……大丈夫でしょうか」  さすがに渡邉も心配になり、聖の顔にティッシュをかざしてみた。 「…………」  寝息に合わせて揺れるそれを見て、渡邉は安心した。  結局聖は、この日一度も起きることがなかった。  そして渡邉は、今夜もこたつで眠った。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2330人が本棚に入れています
本棚に追加