35人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
慌ただしく過ぎる朝の食堂は寮の日常であり、ある特定の人物の周囲が常に賑わっているのも今やベルリバティスクールの日常になっていた。
「啓太、今日の放課後の予定は?」
朝食のフランスパンをコーヒーで流し込みながら和希がさりげなく聞くと、真向かいの席に座っている啓太は首を傾げて少し考えた。
「んー、どーしようかなぁ」
何も考えていなかった啓太は、取り敢えず腹を満たす事に専念しようとご飯を口に運ぶ。
「やっぱり朝はご飯じゃない?お腹にたまるし」
朝食に日本食を選んだ啓太と違って、和希はパンを選んでいた。
「今日はパンの気分だったんだよ。いいだろ別に」
ちょっと拗ね気味な和希に啓太はクスクス笑う。
「悪いとは言ってないだろ」
「分かってるよ。
それよりモタモタしてると遅刻するぞ」
「それこそ分かってるよ」
笑いながらパンを頬張る和希にツンとすました顔を見せた。
「ハニー!」
啓太と和希が食事を済ませた頃、大きな声が響き渡る。
声に聞き覚えのある2人の反応は違っていた。
和希はこれみよがしに舌打ちをし、それに対して啓太は苦笑を浮かべている。
「ハニー、今日は練習見に来てくれるよね」
啓太の隣に陣取った成瀬は、さりげなく啓太の手を取る。そして、戸惑う啓太の手の甲にキスを落とし成瀬はニコリと笑う。
「何してるんですかー」
和希は慌てて席を立ち大声を出した。
「…ああ、いたんだ?お友達君」
冷ややかに言う成瀬に和希は眉を寄せながら必死に自分を押さえていた。
「か、和希、堪えて」
「ハニー、お友達君の事はほっといて僕の事を見てくれないかな?」
啓太の手を撫でながら見つめている成瀬に啓太は戸惑い、和希はテーブルをダンダン叩く。
「成瀬さん、いい加減にして下さい!」
「お友達君には関係ないよ。僕はハニーと話してるんだから。ね、ハニー」
顔を覗きに込まれた啓太は、和希と成瀬を交互に見て困っていた。
寄ると触ると自分を挟んで口論を繰り返す2人に、何故仲良く出来ないのかと真剣に悩んでしまう時がある。啓太こそが原因だと、本人だけが気付いていない。
最初のコメントを投稿しよう!