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まるで塗り潰したかのような闇が張りついている、静かな夜だった。
風もなく、ただ蒸し暑いのっぺりと湿った空気が漂っていた。
そこへ、
一陣の風のような気配が流れてきた。
ガサガサと下草を踏みつける音からして、どうやら幾人かの人影が駈けているようだった。
その人影は、誰もが粗末な服しか身につけていなかった。
この土地の農民の服装だった。
しかし、その姿には似合わない装備がカチャカチャと微かな音をたてていた。 マシンガンや手榴弾、なかにはバズーカ砲を担いでいる者もいた。
彼らは【ビーラーゲリラ】と呼ばれていた。
誰もが無口で、しかし注意深く前へ駈けていく。
その先には、密林には不釣り合いなコンクリートとプレハブで出来た建物があった。
二重の金網で囲まれたその建物は、いくつものサーチライトで照らされて、誰も寄せ付けない威圧感を放っていた
その金網から20mほど離れた茂みに身を潜めている農夫のもとへ、別の男が腰を低く落とした姿勢で滑るように、しかし静かに近寄ってきた。
そして小さな声で短く報告する。
「あと7分ぐらいで花火が上がる」
「よし。後方のAT部隊に連絡を入れてくれ。5分後に突撃するぞ。」
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