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「ヒロって凄いでしょ」
部活を終えての帰り道、皆と別れて最後に家が近い真由美と二人になったとき、僕の心を見透かしたようにそう言われた。
「うん、まさか葉山が主役だなんてな。どっちかっつーと、あんまり人前出るの苦手そうなタイプに見えるのに」
「だよね。でも私、去年ヒロと同じクラスになって初めて喋ったときに“部活何にする?”って聞いたら、あの子ソッコーで“演劇部”って答えたんだよ。高校入る前から決めてたんだって」
「実は凄い目立ちたがりとか?」
「その逆。仲良くなってから聞いたんだけど、なんか中学の時に軽くイジメにあったりしたらしくて、気弱な性格を変えたかったんだって。自分じゃないものになってみたいんだって言ってた」
なるほど。
それにしてもあのギャップは激しすぎる。
最近は授業中もついつい葉山を盗み見てしまうが、どうしても同一人物とは思えないのだ。
くせのないショートカットに銀色の眼鏡。
制服は一切校則に逆らわない模範的な着こなし。
色白だが、顔の造作は可もなく不可もなく、身体は小柄で薄ぺったい。
成績は中の中。
友達は多くない。
しかし一度舞台に上がると彼女は変身する。
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