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誰に教えられたわけでもないのに、僕は確信した。
あらためて思えば、今まで気付かなかったのが不思議なぐらい、葉山の視線はいつも津田の姿を追っていた。
“愛の力”…か。
なるほど、真由美が気付かないはずはないな。
「オイラ、どうやら失恋してしまったみたいです」
そう言うと、真由美はカラカラと笑った。
「でしょーね。ヒロは一途さんだから。で、何て言ってフラれたの?」
「言う前から不戦敗っスよ」
「カーっ!どいつもこいつも情けないっ!」
「じゃあ真由美は、相手に他に好きな奴がいるってわかってんのに告白なんかできるか?」
「全然ヘーキ!」
「デリカシーのない奴だな、オマエって」
無駄に自信満々で笑っていた真由美が、ふぅっと一息ついた。
「ヒロもね、アンタと同じコト言ってた。“カノジョがいる人に告白なんかできない”って。“そんな勇気ない”って、ね」
「津田、カノジョいるのか?」
「うん。他校の演劇部の子。超積極的で、津田っちに“一目惚れしましたっ”とか言ってさ。ヒロは前からずっと好きだったのに、あんなだから、ポヤポヤしてる間にあっさり横取りされちゃった」
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