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バスが来るまでの短い間、僕らの交わした言葉は多くない。
仲間のこと、芝居のこと、
そして自分のことを少し。
相変わらず僕らは、接点の少ないただのクラスメイト止まりだ。
「行けるかな、全国大会」
彼女は微笑む。
「正直、自信ないよ。でも、できる限りのことはやったから、もし明日で全部が終わっても後悔はしない」
近づいてくるバスのヘッドライトを映して、彼女の瞳は凛と前を見つめていた。
「頑張ろうな、明日」
「うん。頑張ろうね」
本当は言いたかった。
好きだって、ちゃんと。
もし明日負けたら、僕の契約期間は終わる。
そしたらもう、僕は葉山と話をする機会はないかもしれない。
でも。
言えなかった。
「明日、雪降るかな?」
僕の答えを待たずに、彼女を乗せたバスの扉が閉まった。
冷えた冬の夜空を見上げながら思う。
たとえ明日、全てが終わってしまったとしても。
彼女は自分の想いを
彼に伝えるのかもしれない。
もしも雪が降ったなら。
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