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「あれ、相川くんてバス通学だっけ?」
「あ、いや…ちょっとな。葉山、今日はひとりか?」
「うん。真由美ちゃんは塾だし、津田くんも今日はなんか用事があるからって先に帰った」
「ふうん、めずらしいな。デートかな」
「そうかもね」
彼女の声は不思議だ。
静かなのによく通る。
低いのに可憐で。
擦れているのにつややかで。
そして心の揺らぎに忠実だ。
最後の一言は、どんなに平静を装っていても、少しの無理が滲んでいた。
僕はもう少しそれを聞きたくて、意地悪を続けてしまう。
「明日はせっかくのイブなのに大会だから、今日のうちに彼女のご機嫌とっとかないとなー。彼女持ちは大変だな」
「あら、相川くんは何か予定でもあるの?だったら無理矢理巻き込んで悪かったね」
葉山が唇の端を上げて笑い顔を作ってみせた。
どうやら僕は軽く逆襲されてしまっているらしい。
まぁ、それはそれで悪くない。
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