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「いよいよ明日か…。やっぱ緊張する?」
「う~ん、そうでもない」
「マジで?凄いな」
彼女が微かに照れ笑いした。
薄々感づいてはいたが、あの日僕が連れていかれたのは、演劇部の稽古場だった。
演劇部は2年と1年が3人ずつの総勢6名。
副部長の津田は運動神経抜群で、見た目もサッカー部のGKあたりが似合いそうな風情なのだが、実は三度の飯より芝居が好きな超文科系男子。
部長の真由美は…なんというか、とにかく目立つ。まず背が高い。しかも美人。気は強いがサバサバした性格で、昔からクラスの人気者だった。
この二人が演劇部員なのは知っていた。
しかしもうひとりの2年生が同じクラスの葉山比呂だったとは、本当に意外だった。
何の取り柄もない僕が言うのもなんだが、葉山はいつも教室の隅で数人の女子とだけ話しているような、おとなしくて地味なキャラで、人前に出て大きな舞台で演技をしたがるタイプには到底見えなかったからだ。
あれから津田と真由美に押し切られる形で、期間限定で照明の助っ人を引き受けることになってしまった僕だが、本当の理由は“葉山の演技を見てみたかったから”かもしれないと今は思う。
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