ピン・スポット

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「でも…相川くんが手伝ってくれてホントに助かった。もし誰も引き受けてくれなかったら、台本変えなきゃいけなかったかもしれない」 「そんなにヤバかったの?」 「うん。相川くんにやってもらう最後のシーンのピンスポね、県大会までは会場が狭かったから、津田くんが出番終わってからダッシュでできてたの。でもさすがにブロック大会の会場は広いから、どう計算しても間に合わなくなっちゃって」 「確かに、あのシーンはスポットライトがないと締まらないよな」 彼女が頷く。 照明には多くの種類がある。 背景に色を付けるホリゾントライト、舞台に向けて役者の顔を照らすシーリング。 舞台天井から円錐形の光で限られた空間を抜くサスペンションなど、数えればきりがない。 これらは会場側と事前の打ち合せが必要だが、逆に言えば本番は技師がオペレートしてくれるので、タイミングの指示を出す人さえいれば事足りる。 今回の芝居はキャストが2年の3人。 スタッフは舞台監督と音響と照明を1年が1人ずつ担当している。 そして僕に課せられた役目は照明補佐。 担当は事前打合せ不可のムーブライト。 ピン・スポットというらしい。
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