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「それでも私からしてみれば凄いですよ」
尊敬の眼差しを向ける前田さんに
「ひとつ嘘をつくと、その嘘を隠す為に新たな嘘をつく、更にその嘘を隠す為に嘘を重ねる」
と言う、死んだ婆ちゃんの言葉を思い出した。
しかし悪い嘘はついていない……はずだ。
俺は心の中で婆ちゃんに一応謝っておいた。
グゥゥ
それと同時に鳴った俺の腹の虫。
前田さんの視線を横から感じ、俺は恥ずかしさから顔が熱くなるのを感じた。
暫くの沈黙の後に前田さんは突然吹き出した。
俺はきっと今耳まで真っ赤だろう。
「あの。お礼になるか分かりませんけど、お弁当作ってきたのでどうですか? 」
笑いを堪えながらの申し出に前田さんの方を見ると、その手には青い布のお弁当袋が輝いていた。
ナイス腹の虫!
俺は心の中で腹の虫に小さくガッツポーズをした。
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