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昨晩のシャワー上がりに明美は、愛用の水玉模様のパジャマをユイに着せた。さらにそのあと彼女は、自分にベッドを使うよう進言してくれたのだが、さすがにそこまで尽くされるのは心苦しいのでユイは慎んでこれを辞退した。
今更だが……もし睡眠中に彼女の両親が部屋の扉を開けたら、一体どう誤魔化すつもりだったのか少し気になる。
「ん。うぅん」
借りた布団を丁寧に畳んでいたら、明美が眠い目を擦りながら起き上がった。
「あ、ごめんなさい。起こしてしまったかしら」
「おはよー。ふぁぁー」
「おはよう明美。昨日は色々とありがとう」
「ほわぁ。いいよん、何かパジャマパーティーみたいで楽しかったし」
そう言いながら明美が窓のカーテンを開ける。眩い朝の日差しが部屋いっぱいに入ってきて。
「うそ。どうして?」
それを見たユイは、驚愕して瞳を見開いた。
「今日は高校休みだし。うちの両親共働きでたぶんもういないから、リビングでゆっくり朝食……、ってあれ。ユイ?」
全力を奮って窓際に走り寄り、ガラス戸を開け放つ。窓枠に掴まると落ちてしまいそうなくらい身を乗り出して空を見上げる。
「この空は、コンピューターグラフィックスじゃない……!」
「え、え、ちょっとユイってば突然どうしたの、」
ユイはそのまま勢い良く部屋を飛び出した。
◇
「起きてケン、大変。てかパジャマの下だけ脱いで何やってんの? そんなことよりユイがっ、」
何ってお前これから朝勃ちの処理をだな……、てユイが?
「どうした何があった!」
途中まで下げていたズボンをもの凄い勢いで引っ張り上げると、健吾は男前に怒鳴り返した。
「よく分かんないんだけど、外を見たら急に驚きだして──、」
階段をドタバタと駆け上がる騒がしい音が聞こえてくる。あっという間に健吾の部屋に飛び込んできたユイが、窓を指さしながら血相を変えてこう叫ぶ。
「空が、空が青いのっ! どこまでも続いているかのように澄み渡ってて。空が青いなんて信じられない!」
「何を、言ってるの」
常軌を逸した言動に唖然となる明美。しかし健吾は、緊張感ゼロな水玉模様のパジャマを着たままとんでもないことを口走るユイも、それはそれで萌えるな、とかどうでもいいことを考えていた。
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