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「ずっと俺の傍にいたいからと、戦いを拒否し始めるユイ。しかしエイリアンは悠長に待っちゃくれないのだ。次々に人類の主要都市が破壊され人口が減っていく! ユイは選択を迫られる。愛を取るか人類を救うか」
「……」
「しかしユイは決意する。愛するたった一人の俺を救うためだけに自分の身を犠牲にエイリアンと戦う運命を選んだ。しかーし!」
「しかしが多い。どうせ語り切るんならもう少し整理してしゃべってよ」
すでに憐憫の眼差しを寄越してくる明美の的確な突っ込みにも負けず、健吾は尚も熱弁を振るう。
「愛するユイを守るため俺はエスパー的な特殊能力を覚醒させる。そこで登場するのがこの戦闘ロボだ!」
横たわるロボットをビシッと指差す。
「俺の思念波を取り込んですごい不思議パワーを叩き出すこの戦闘ロボに乗り込み、ユイとそのついでに人類を守るべく立ち上がる俺!」
「うわ、途中から別モノになってるし。人類ついでかよ」
気が触れたように熱狂する健吾を見て、ユイが眉間に皺を寄せる。
「彼、さっきから何を言っているの?」
「受信しないほうがいいよ。タチの悪い怪電波だから」
健吾の発する怪電波は、そのあと一五分ほど続くのだった。
「そろそろ手を貸してほしいんだけど。いいかしら」
「んー。それは構わないけどさ、ユイ。ずばりこれってなんなの? 差し支えなければ教えてほしいなぁーなんて」
「もしかしてあなた達、NFAを知らないの……? でもそんなはずは、」
ユイの驚愕の表情。
目を丸くする明美。
「えぬえふ、えー?」
「そう。人型兵装端末の総称。本当に見たことないの? 世界中の、八割以上の戦場に投入されているのに」
「あ、もしかしてゲームとかマンガの話? 私そういうの分かんないんだ。ゴメンね、ノリが悪くて……」
茶化すことなく本当に申し訳なさそうに明美が答える。冗談ではない様子を見て取ったらしいユイは、心の底から恐ろしくなった、という感じに顔面を蒼白させた。
「私は、いったいどこに来てしまったの──?」
暫くのあいだ呆然としていたユイだったが、かぶりを振って立ち直るとロボットのもとへ。
無言の作業が始まる。彼女がロボットの脚部から細かい網状のシートを取り出す。それを機体に被せ、上から大量の纏まった枝葉や草木を載せていく。三人掛かりでも結構な手間だった。
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