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しかし、空の青から連想する確かな感覚がある。あの、青い光に包まれて飛ばされたのだとしたら──。自分をここへ連れてきたのは、やはり〈ジールヴェン〉の意志なのだろうか。絶望的な戦局からユイを存命させるために。
そして腹部に感じたあの熱はいったい何だったのか。機体システムとリンクする操縦系の生理的な反応は、全て熟知しているはずだったのに。あんな感覚、いや痛覚を発したのは初めての経験だ。これも能動的ではなく、受動的なものだった。〈ジールヴェン〉が関連しているようでならない。
もう幾度も機体のAIユニットと各システムを調べているが、特異なもの、異常なものは何も見つかっていない。これ以上詳細に調べるのなら、モジュールやフレームを解体する必要がある。そんな設備と技術が果たしてこの世界にあるだろうか……。
膝に力を入れて立ち上がる。とにかく、疑念を頂いたままただ考えているだけでは何も始まらない。〈ジールヴェン〉にもう一度会いに行こう。太陽の光を反射して中空にきらきらと輝き散る噴水を横切り、ユイは再び歩き始めた。
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