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「で、その仕事を“業拾い”って呼ぶんだ。俺はそれ専門の死神さ」
話しが壮大過ぎてついていけない。
取りあえずコレは現実で、目の前のコイツは死神。業拾いの監視係だと。
そういうことにしておこう。じゃないと、いつまでも説明がつかない。
「アンタが死神なのは分かったよ。でも……何で黒猫の姿なんだ? しかも傷だらけで」
「俺達は通常なら人とさほど変わりない姿をしてる。でもって人間には見えない。ただ……ちょいとめんどくさい事態に巻き込まれてね」
黒猫もとい死神は言葉を濁した。一体何があったんだろうか。
それについて尋ねてみるとしばらく黙ったあと、ゆっくりと口を開いた。
「……簡単に言えば……仕事中に呪いをかけられたんだ。それで目を覚ましたらここにいた」
呪い? また現実味の無い単語を。
でも死神の存在を認めた今ではそれすらも不思議ではなくなってしまう。
「誰にやられたんだよ?」
「んー……悪い。そこは企業秘密。つか俺にもよく分からん。にしても困ったな」
黒猫は頭を掻く様な仕草をしながら小さくため息をつく。
「どうしたんだ?」
「いやー……呪いくらったせいで、死神の力とかほとんど封じられたんだよねー」
「……で?」
「困ったなー。これじゃ仕事出来ないよー、どっかに代わりはいないかなー……」
こっちを見つめる視線。
言いたい事は大体分かる。
「そうだ!! キミ代わりに死神やっ」
「だが断る」
言い終わる前に断った、予想通りの展開。
誰がこんな訳分からん職業に首突っ込むか。
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