戦う力と銀の瞳

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 俺は異変の起きている場所に駆け付けた。  この猫の身体は小さいながらも素早く動けることに気づいた。  辺りは既に瓦礫の山だ。壊された自動車が転がり、人々はただ逃げ惑っている。  恐らくこの人達は事態を理解出来ていないだろう。 なぜならこれは事故でも、人為的なテロでもない。  この騒ぎの現況。ソイツは電柱の上に陣取って破壊の限りを尽くしていた。  熊を思わせる巨体、獅子の様なたてがみ、強靱な両腕。  さらに特徴的なのはその腹部。巨大な球体が入ったようなそれは大きく膨らんでいる。 「来たか……魔業」  奴は”魔業”といい、人の業が暴走し飲み込まれたことで生まれる異形の者。あの丸い腹部には飲み込まれた業の持ち主が閉じ込められているんだろう。  そして、魔業は一度現れたら周囲を壊し、全てを奪うまで止まらない。  このままじゃ……大惨事になる。  電柱の上に鎮座している魔業が右腕を上にあげた。そこに黒い球体が造りだされる。 「マズい!!」  俺が叫んだ瞬間、奴はそれを地面に投げ付けた。辺りに広がる爆風。吹き飛ぶ人々。 「ちくしょう!!」  砂煙の中、俺は奴に接近する。その距離十メートルほど。  向こうもこちらの存在に気付いた様だ。 「誰だ……貴様……」  低い声を放ち、怒りの籠った眼でこちらを睨んでくる。
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