非現実の始まり

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 いつもと変わらない朝。窓から差し込む朝日が眩しくて目が覚めた。  まだ眠気は残るがいつまでも寝ぼけてはいられない。手早く学校の制服を着て一階に降りた。  リビングはしんと静まり返り、いつも食事をとるテーブルに出来上がった朝食のおかずが丁寧にラップをかけられて置いてあった。  我が家は父親が外国単身赴任で留守、少し大きな会社で管理職に就いている母親も朝早くに出勤してしまう。だからこれが普通の光景。  少し冷たくなりかけのおかずにトーストを焼いて簡単に朝食を済ませ、学校に行く支度をし 「いってきます」  誰もいない室内に一言いって家を出た。  今日も見上げれば一面の青空、いたって普通の日常が始まり普通に終わって行くのだろう。  別につまらないと感じた事は無い、これが世の中なんだから。  でも、この時までだったんだ。俺、水月 晴(ミナツキ ハル)の過ごすこんな穏やかな日常は。
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