非現実の始まり

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「くそっ!!」  気がついたら体が動きだしていた。  荷物を投げ捨てて飛び出した俺は、猫を拾いあげてそのまま転がるように反対側の歩道へ逃げ込んだ。 「バカ野郎! 死にてぇのか!!」  罵声一つ残して車は通り過ぎる。俺だって死にたくないっつーの。  制服に付いた泥を払いながら猫の安否を確かめる。  やはり猫は気絶していた。酷いものではないが、全身に細かい切り傷がある。他の猫とケンカでもしたか、虐待されて捨てられたか。傷つきながら何とか歩いて来たがここで気を失った……と考えるのが一番正確だろうか?  もし今この猫を放置すれば、明らかにまた轢かれそうになるか、カラスの餌になるのが良いオチだろう。 「……戻るか」  命は大事に。眠っている猫を抱えて俺は一度家へと戻ることにした。
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