非現実の始まり

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 道を引き返して家へ帰ってきた。  猫は気を失って眠ってはいるものの、やはり大事はないようだ。  ふと携帯の時計を確認。時間は既に一限目の開始時間を過ぎている、はい遅刻ー。  取りあえず迷ってても仕方ない。家に入って床に大きめのタオルを敷くと、そこに猫を寝かせた。  寝顔を見ると何だか癒される。やっぱり動物って良いもんですよね。  それから三十分位経っただろうか、眠っていた猫がゆっくりと目を覚ました。  黒猫は辺りをキョロキョロと見回している、まさか倒れてる自分を拾ってくれたとは思わないだろう。  俺は猫を抱き抱え、目線を合わせて尋ねる。 「よ、猫。腹減ってないか? 飯食うか?」 「……」  いたたた。痛てぇ、あまりにも痛すぎるぞ俺。まさか本気で動物に喋りかけちまうとは……。  顔も真っ赤になり慌てて猫に与える牛乳を取りにキッチンの方へ向う。 冷蔵庫の戸を開けて中を確認していたら。 「あのさー。普通の牛乳じゃなくてホットミルクにしてくんない?」 「うるせぇ我が儘言うな」  しばらくして違和感に気づいた。  ん? 何だ今の声?  この家には今、俺と拾った猫しかいない。  じゃあ今の声は何だ? 俺は誰と会話したんだ?  アレ、何コレまさか幽霊ですか? この家いつからお化け屋敷……? 「もしもーし?」  またきたぁぁぁぁ!! 「誰だ!?」  勇気を出して振り向くとそこには件の黒猫がいた。 「はろぅ」  前足を上げ、元気に挨拶してきやがった。やっと見つけた牛乳のパックが手から滑り落ちる。 「ハ、はろぅ……」  さぁ神様、この状況を二十文字迄で簡潔に説明せよ。  猫 が 喋 り ま し た。
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