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俺のすぐ側まできたサーペントワンは、足で頭を小突いてきた。
「死んだ、んだな」
確かめるように言うと、サーペントワンは小突くのを止める。
そもそも仮に死んでいたら何を話しかけても無駄なんじゃないかと思ったが、今はそんなことどうでもよかった。
ただ、全力でサーペントワンの不意を突くだけである。
「よし」
サーペントワンが動いた。
砂を踏みにじるような音。
恐らくは、俺が死んだと思い込んで後ろを向こうとしている。
今だ、俺は飛び跳ねるように身を起こした。
サーペントワンは俺に気付いて振り返ろうとしたが、それよりも早く。
俺は、両袖からの包帯をサーペントワンの背中に突き立てた。
だが、
「やれ、やれ」
返ってきたのは、何か硬いものの手応えと呆れたようなサーペントワンの呟き。
何が起きたのか、俺は一瞬遅れて理解した。
突き立てた包帯はコートを破っていた。
そしてそこから見えるのは、おおよそ人間の肌には見えない赤いトゲトゲのついたものである。
恐らくは、殻。
甲殻類の、まさに蟹のような殻で、サーペントワンはとっさに背中を覆ったのだ。
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